ピロリ菌とは
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、アンモニアを作り出すことで酸性を中和し、強い酸性を示す胃の中でも生き延びることができる細菌です。
ピロリ菌に感染すると、慢性的な胃炎を起こします。そしてその状態が長く続くことで萎縮性胃炎へと進展し、さらには潰瘍やがんなどが発生するリスクが高まることが分かっています。
その他、胃MALTリンパ腫、胃ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)といった疾患も、ピロリ菌感染との関連が指摘されています。
このように、ピロリ菌は多くの胃の病気と密接に関係している細菌ということができます。
ピロリ菌の有無は、胃カメラ検査によって調べることができます。当院でも、ピロリ菌検査・除菌治療に対応しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
ピロリ菌の症状と原因
ピロリ菌の症状と原因、またピロリ菌を原因として起こる病気をご紹介します。
ピロリ菌の症状
ピロリ菌に感染した直後は、特徴的な症状はありません。
しかしこれを放置してしまうと、慢性胃炎、萎縮性胃炎、胃がんなどを引き起こすことがあるため、それらに付随する以下のような症状が出現します。
- 胃のむかつき、胸やけ
- 胃の痛み
- 吐き気
など
セルフチェック
先述の通り、ピロリ菌に感染しただけでは特徴的な症状が現れません。ご自身や家族の既往歴、なんとなく感じる症状から見た、ピロリ菌感染のリスクチェックをしてみてください。
0~5個あてはまる:ピロリ菌に感染している可能性は低いと言えます。
6~10個あてはまる:ピロリ菌に感染している可能性があります。早目にピロリ菌検査を受けましょう。
11~15個あてはまる:ピロリ菌に感染している可能性が高いです。すぐに検査を受け、陽性であれば除菌治療を受けましょう。
- 自身が胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断を受けたことがある
- 家族が胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断を受けたことがある
- 自身が慢性胃炎、胃がんの診断を受けたことがある
- 家族が慢性胃炎、胃がんの診断を受けたことがある
- 胃のあたりがときどき痛む
- 以前よりすぐ満腹になる
- 食後に胃もたれを起こすことがある
- 胃の萎縮を指摘されたことがある
- 胃薬を飲んでも効果が持続しない
- 胃が張る、重いことがある
- 空腹時に体調不良を起こす
- ピロリ菌の除菌治療を受けたことがない
- ピロリ菌に感染したことのある家族がいる
- 食生活が不規則
- ストレスを感じることが多い
ピロリ菌の原因
ピロリ菌が感染する原因は、未だはっきりとは解明されていません。
ただ、井戸水の飲水利用、また親子感染などを原因としているのではないか、と言われています。現代では井戸水を利用する機会はほとんどないかと思われますが、以前は一般的に行われていたことです。実際に、年齢層が上がるほど、ピロリ菌への感染率は高くなります。
また若い世代についても、親から子へ、親から子へと感染が連鎖している可能性が疑われます。唇同士でのキス、口移し、お箸やスプーンの共有などは、できる限り避けるべきでしょう。
ピロリ菌が原因で起こる病気の種類
慢性胃炎、胃潰瘍、胃がんが代表的な疾患ですが、その他にもさまざまな疾患の原因となります。
- 慢性胃炎
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 胃がん
- 胃ポリープ
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
など
ピロリ菌と胃がんの関係性
ピロリ菌に感染すると、数十年間のあいだに3~5%の割合で胃がんを発症すると言われています。胃潰瘍・十二指腸潰瘍については、10~15%とかなり高い割合です。
ピロリ菌に感染したからといってすぐに重い病気になるわけではありません。感染の有無を若いうちに確認しておくこと、感染している場合には早期に除菌治療を受けることが大切です。
ピロリ菌の検査
検査方法
ピロリ菌の感染を判定する検査には、胃内視鏡を用いて粘膜を採取して行う「培養法」「迅速ウレアーゼ試験」「組織検鏡法」があり、これらは通常の胃カメラ検査を行う際に同時に受けられます。
またその他、内視鏡を用いない「尿素呼気テスト」「抗体検査」「抗原検査」などで調べることもできます。
検査費用の目安(3割負担の場合)
ピロリ菌検査 | 約5,000~6,000円 |
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なぜ検査をした方がいいのか。
ピロリ菌に感染した状態が続くと、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどのリスクが高まります。これらの予防という意味でも、ピロリ菌検査、除菌治療は非常に重要です。
また、上記疾患がすでに発症している可能性を考えると、特に内視鏡を用いたピロリ菌検査が有効と言うことができます。過去にピロリ菌に感染していたかどうかも分かります。
ピロリ菌はうつる?
ピロリ菌が感染するタイミングは、小学校入学前の幼児期が多いと言われています。この時期はまだ胃液の酸性度が十分でないことから、ピロリ菌が生き延びやすいのです。そのため、この時期は親子であっても、唇同士でのキス、口移し、お箸やスプーンの共有などは、できる限り避けるべきと言えるでしょう。
一方で、それ以上の年齢になると、濃厚な接触以外で感染することは稀です。大人同士のキスなどで感染することはまずありません。
ピロリ菌がなくなれば、胃がんリスクはなくなる?
胃がんは、ピロリ菌だけを原因として発症する病気ではありません。そのため、ピロリ菌を完全に除菌したとしても、胃がん(やその他の胃・十二指腸の病気)を100%防ぐことはできません。
ただし、ピロリ菌を除菌することで、胃の萎縮の進行を抑制できることが分かっています。結果、胃がんのリスクを約3分の1程度に抑えることができます。
ピロリ菌除去後の胃がん発生率
※出典:日本ヘリコバクター学会[市民の方のためのピロリ菌解説]
ピロリ菌の治療・除菌方法
WHO(世界保健機関)が「確実な発がん因子」と発表したことを受け、現在は日本でもピロリ菌の除菌治療が保険診療として行われています。
ピロリ菌検査によって感染が判明した後、抗菌薬2種類+胃薬1種類を1週間、毎日服用します。この最初の除菌治療を「一次除菌」といい、ここで除菌に成功すれば治療は終了です。
一次除菌で除菌できなかった場合、耐性菌がいると考えられるため、抗菌薬を1種類変更した上で、同じように1週間、毎日服用します。これが「二次除菌」です。
ここまででほとんどの症例で除菌が成功しますが、二次除菌でも除菌できなかった場合には、さらに抗菌薬を変更し、「三次除菌」を行います。三次除菌からは、自費診療扱いとなります。
ピロリ菌を除去しても再感染する可能性はあるのか?
ピロリ菌の除菌治療に成功した場合も、二度とピロリ菌に再感染する可能性がないわけではありません。しかしその確率は非常に低く(1~3%)、胃がんをはじめとするさまざまな疾患のリスクを低減できることを考えると、「再感染する可能性があるから初めから受けない」という選択はおすすめできません。
繰り返しになりますが、除菌治療に成功したからといって、胃がんなどの病気を100%防げるわけではありません。除菌治療後も、定期的に胃カメラ検査を受けることが大切です。